理学療法士の海馬

新人理学療法士だった僕に伝えたいこと

理学療法士が,既往歴に胃切除術がある症例を担当したら

minimalzuhの見解

 

介入時間と,貧血に気をつける 

食事中・食後30分は,早期ダンピング症候群に気をつける 

胃切除により食物を胃に貯めておけない→高い浸透圧の食物が急に小腸に流れ込む→体液が腸管内へ→循環血液量の減少

主症状:動悸,冷や汗,めまい,全身倦怠感,腹部症状(下痢,腹痛,嘔吐など)

対処:安静(15分程度で軽快)

 

食後2~3時間は,晩期ダンピング症候群に気をつける

食物が急速に腸に→短時間で大量の糖質吸収→血糖の上昇→過剰なインスリン分泌→低血糖

主症状:食後2~3時間での頭痛,倦怠感,冷や汗

*術後少し経ち,1回の食事量が多くなると生じる.

対処:糖分の摂取 

 

手術から半年以上の経過している場合,貧血に気をつける

ビタミンB12葉酸,鉄分などの吸収障害→貧血

*術後半年以上経過してからの変化

 

体重の減少幅に気をつける

胃癌術後の体重減少は,幽門側胃切除術後7-8%,噴門側胃切除術後9-10%,胃全摘後では15-20%であり (Rush BF, Cancer, 1960 Davis JL, Ann Surg Oncol, 2016),一度減少するとその後はほとんど増加に転じない.

 

胃癌術後の体重減少が15%未満の場合,術後6ヶ月の時点での補助化学療法の継続率は73.2%だが,体重減少が15%を超えると,45.5%まで低下する (Aoyama T, Gastric Cancer, 2013)

 

また,pStageⅡ-Ⅲの症例に関しては,術後の体重減少は全生存期間に関与する独立したリスク因子であり,体重減少が15%未満では5年生存率が59.9%なのに対し,体重減少が15%を超えると,36.4%と低下する (Aoyama T, Int J Clin Oncol, 2017)

 

体重の減少は,術後1ヶ月までが最も急であり,特に術後1週間までの除脂肪体重減少が最も大きいことが報告されている (Aoyama T, Gastric Cancer, 2016)