理学療法士の海馬

新人理学療法士だった僕に伝えたいこと

肺癌周術期のリハビリ

 

肺癌周術期のリハビリの目的

・肺癌周術期の呼吸リハビリの目的は,排痰を促して合併症を予防することである.

  (Varela G, Semin Thorac Cardiovasc Surg, 2011) 

・手術前後のリハビリでは,呼吸器合併症の発症が予防できるとされている.

 (佐藤, 日本医療・病院管理学会誌, 2017) 

・術前後のリハビリを行うことは,術前のみ,術後のみと比較しても,合併症の発症は低い.

 (Fujimoto S, Int J Clin Oncol, 2019) 

肺癌術後合併症の発症頻度

・日本での肺癌術後の呼吸器合併症の発症割合は7.5~18%であり,肺炎に限ると1.3~4.4%である.

  (Sekine, Surg Today, 2010 Takehara T, Interact Cardiovasc Thorac Surg, 2013 佐藤, 日本医療・病院管理学会誌, 2017) 

・肺炎は術後呼吸器合併症として最も多い.

  (Pehlivan E, Ann Thorac Cadiovasc Surg, 2011 Varela G, Eur J Cardiothorac Surg, 2006) 

 

術前評価

・階段昇降テスト:3階までの昇降でFEV1.0 > 1.7L,5階までの昇降でFEV1.0 > 2.0Lと肺機能との関連性が報告され,肺葉切除後症例では,3階までの階段昇降が可能であれば肺合併症のリスクは低く.肺全摘術症例では,5階まで昇降可能であれば手術に適している.

 (Colice G, CHEST, 2007 Alessandro B, Chest, 2002)
・運動時の酸素飽和度が4%以上低下する場合,術後呼吸器合併症が生じるリスクが高くなると報告されている.

 (Colice G, CHEST, 2007)

 

術前後の運動耐用能の変化

・術前→術後(胸腔バルーン抜去から7病日目)では,6MWTが術前431.3 ±70.5m → 術後379.6 ± 86.5mと有意に低下する.

 (石坂, 理学療法科学, 2016)
・術後2週〜1年までを追跡した報告によると,FVCもVO2maxも,術後1年まで伸び続けている・

 (Nagamatsu, General Thoracis Surgery, 2007) f:id:minimalzuh:20190508231733p:plain

 ・術後1ヶ月〜6ヶ月までを追跡した報告では,術後3ヶ月と6ヶ月では呼吸機能検査と運動耐用能の変化が横ばいになる.

 (Thida Win MD, Respiratory Care, 2007)

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