理学療法士の海馬

新人理学療法士だった僕に伝えたいこと

生活期脳卒中者の装具の惨状!?

1.生活期で装具を診る必要性
 必要に応じて,脳卒中者に対し下肢装具が処方される.
 この下肢装具は,脳卒中者の身体機能の変化や,形態(下肢周径など)の変化により,適応や適合が変わると思われる.
 実際に,装具外来を行っているクリニックの調査(大木ら,第50回日本理学療法学術大会,2015)によると,1年間で40件の装具外来利用(詳細は下表参照)があったとのことだ.そのうち,再作成に至ったのは16例であり,前回の装具処方から1514±835日が経過していた.また,装具の修理に至ったのは,21例であり,前回の装具処方から1154±1167日が経過していた.
 このように,装具の再作成や修理に関するニーズは,一定数あると思われる.
 
2.脳卒中者は装具の耐用年数を知っているのか?
 装具には耐用年数が決められており,一定期間が経てば,保険適用にて再作製が可能となっている.
 成瀬らによると,デイケアを利用しており,脳卒中の既往があり短下肢装具を使用している79名を対象にした調査では,現在使用している装具が,作成してから平均で3年10か月経過しているとのことであった.また,最長の人だと,30年使用している者もいた(成瀬ら,第41回青森県理学療法士学会,2017).
 大西らによると,装具を使用している要介護認定者のうち,装具の耐用年数を知らないと答えたものは実に85%にも及んでおり(大西ら,第47回日本理学療法学術大会,2012),装具に関する患者教育が不足していることが露呈した.
 
3.装具の知識不足は,脳卒中者だけにとどまらない
 越後らによると,青森県八戸医療圏のPT30名のうち,装具の作成に携わったことがないと答えたものは実に39%にも及んでおり(越後ら,第41回青森県理学療法士学会,2017),また,下肢装具の知識・技術の認識に関して,「あまりない」「ほとんどない」と答えたものは,70.2%にも及んでいる(中野ら,第52回日本理学療法学術大会,2017).
 このように,装具に関して専門的な知識を有しているはずの理学療法士がこの現状であるため,ケアマネさんも困っている.
 ケアマネを対象とした調査では,自分の利用者で「耐用年数を超えたり,装具が不適切である可能性」が67%にも及んでいるという.また,困りそうな点としては,「装具が適切がどうか判断は難しい(69%)」「相談窓口が分からない(45%)」「耐用年数を超えているか判断できない(45%)」などが挙げられた.このように,多くの生活期脳卒中者と多くの装具使用者と接しているケアマネは,装具に対する対応ができずに困っている
 
このように,生活期の装具に関して,患者教育がおろそかになっており,理学療法士も知識がなく,ケアマネもどうすればいいのか分からないという,驚きの事実が明らかになった.
今回引用したのは全て学会発表であり,しっかりとしたプロセスを踏んだ研究であるかは判断がつかない.しかしながら,おおよそ現状と合っているのではないだろうか.