理学療法士の海馬

新人理学療法士だった僕に伝えたいこと

化学療法による悪心 (嘔気) と運動療法

 

疫学

 悪心・嘔気 (nausea) とは,嘔吐しそうな不快感を伴う症状.悪心・嘔吐により,食欲不振,脱水,栄養状態の悪化につながる.悪心・嘔気を予防することは,がんサバイバーのQOLを維持し,化学療法を継続するうえで重要.抗がん剤開始後1週間以内に生じることが多い.


機序

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一般的な対応

 抗がん剤における悪心・嘔吐の治療は,悪心・嘔吐の発症予防が重要.抗がん剤の催吐性リスクに応じて,適切な制吐薬を使用する (制吐薬適正使用ガイドライン, 2015).

 

評価方法

個別に評価

悪心・嘔吐の強さや頻度を,VASやNRSを用いて評価.

 

症状を包括的に評価

MDASI-J (M.D.Anderson Symptom Inventory 日本語版)  

概要:がんに関連した症状の重症度と日常生活への支障の程度 (24時間以内の) を包括的に評価
日本語版の妥当性・信頼性:確認済み
評価用紙:Japanese version of the MD Anderson Symptom Inventory: a validation study

 

SATS-J (Support Team Assessment Schedule 日本語版)

概要:がんに関連した症状の重症度を,医療スタッフが代理で評価
日本語版の妥当性・信頼性:確認済み
評価用紙http://plaza.umin.ac.jp/stas/frame.html


運動療法の効果

 米国スポーツ医学会のガイドラインによると,悪心に対する運動療法エビデンスは不十分とされている.ガイドラインには,Winningham MLの報告が参考文献として書かれている.論文のタイトルは "The effect of aerobic exercise on patient reports of nausea" と,興味深いが,残念ながらabstractすら見ることができない.

 

運動療法のメカニズム

現状不明.

 

ひとことmemo

運動療法の効果が不明ということは,検証する価値があるってこと.

 

参考

 中村晃和.悪心・嘔吐,下痢.泌尿器ケア.2013.  
 制吐薬適正使用ガイドライン第2版, 2015
 がん診療ガイドライン