理学療法士の海馬

新人理学療法士だった僕に伝えたいこと

大腿骨近位部骨折術後のリハビリで知っておくべきレントゲンの知識

 

 

sliding、telescopingという概念を知っておく

 γ-nailやCHS (Compression Hip Screw) ではカットアウトを避けるために、スクリューとプレートor髄内釘の間がsliding (動く) する構造になっている。slidingが想定された内固定材料のため、slidingが15mm程度までは起きても仕方がないが,整復位・インプラントの設置位置が正しければ10mm以上になることはない(松下隆, 大腿骨頸部/転子部骨折診療ハンドブック, 2009)。逆に言えば、10mm以上のslidingがある場合、過度なslidingと言えるだろう。
 

sliding、telescopingの量を把握しておく

 sliding量に関しては、平均年齢81歳(25-96歳, n=81)では、平均5.9mm(松下任彦, 整形外科と災害外科, 2012)telescoping量に関しては、平均年齢85歳(49-102歳, n=76)では、平均3.2mm(三上悠, 骨折, 2011)である。slidingとtelescopingは概ね1ヶ月は続く(下記)。
 ・術後1週で最終的なsliding量の51%、術後2週で66%、術後1ヶ月で82%、術後2ヶ月で93%(邑本哲平, 骨折, 2011)。

 ・術後1週で最終的なtelescoping量の50%、術後2週で78%、術後3週で90%、術後4週で97%(三上悠, 骨折, 2011)。
 

sliding、telescopingは身体機能に影響するか?

 過度なsliding、telescopingでは有害事象が生じる確率が高く、10mm以上のslidingが起きた6例中、2例に偽関節、カットアウトといった有害事象が生じたという報告がある(邑本哲平, 骨折, 2011)。また、過度なslidingでも、歩行能力への影響はないとされている(伊藤淳, J Clin Rehabil, 2006 山根健太郎, 中部整災誌, 2011)。しかしながら、大腿骨頸部が短縮することにより、股関節外転筋の筋力低下が生じることは考えられる。また、術直後からの荷重では、スライディングにより、近位骨片が遠位骨片に入り込んでいき、整復位が崩れていく。そのため、疼痛が長引く可能性がある

 

参考文献:

www.jstage.jst.go.jp